ついに到来する「電子書籍元年」

 来年、つまり2010年という年は、出版業界にとって歴史的な1年となるかもしれない。それは15世紀にヨハネス・グーテンベルク活版印刷術を発明して以降の、「本とはを紙に印刷されたもの」という人々の意識が大きく変化する可能性があるからだ。

 平たく言えば、2010年こそは電子書籍が本格的に普及する年になるんじゃないか、ということ。実際、業界界隈では「来年こそが電子書籍元年!」などとまことしやかに囁かれている。AmazonKindleを始めとした電子書籍を読むためのデバイスが本格的に普及する、というのがその最も大きな理由。
 といっても毎度おなじみの「まずはアメリカでブレイク⇒日本でも」という流れになることが予想されるので、日本の電子書籍元年は、正確には2011年ということになるかもしれない。

 もちろん、懐疑的な声が多いのも事実だ。実際、これまでも散々いろいろなタイミングで「今年こそ…」と言われ続けてきた(携帯コミックがビジネスとして成立するようになった時とか)。ただし今回はかなり一般メディアなどでもKindleの話題などに触れられていて、人々の無意識にもある種の「予感」のようなものが大分共有されるようになったんじゃないと思う。また、公衆無線LANの普及など、インフラが整備されたことで「いつでもどこでも書籍をダウンロードできる」という環境が整ったこともあり、今度こそついに待望の「元年」が到来する確度はかなり高いのじゃないかという気がする。

 とはいえ、たとえ電子書籍が広く周知され普及したとしても、すぐに紙の書籍がなくなるわけじゃない。とりあえず出版社が現状の「とりあえず刷ってキャッシュを得る」という自転車操業的なビジネスモデルからなかなか脱却できないだろうと思うし、そもそも電子化というのは既存の「版元⇒取次⇒書店」という流通プラットフォームを根底から破壊することとなるからだ。なかなか一筋縄ではいかないだろうな。