21世紀は日本がもっとも苦手とする時代

 どれだけ不況や「失われた時代」が続いても、いまだに日本=裕福というイメージが「かろうじて」流通し、それを多少なりとも誇らしく思えているのは、高度経済成長やバブルを経験した世代の人々がまだギリギリ現役で、彼らの抱く幻想がまだ社会の主流であるからだ。
 
 しかし今後、彼ら彼女らが表舞台から姿を消し、ロスジェネ世代や好景気というものを全く味わったことがないそれ以下の世代だけが残された時、この国の雰囲気は一変するだろう。

 とはいえ、もちろんまだまだ相対的には豊かな国であるのことも事実だ。

 平均寿命は世界第1位で、いくら中国に抜かれたとしてもGDPはまだ第3位。政治はぐだぐだではあるものの、特に内戦とかがあって道端に死体が転がっているわけじゃない。

 しかし一年間の自殺者が12年連続30,000人を超え、国民の幸福度調査では先進国中最低の90位前後。繰り返しになるけど、経済規模では第3位なのに幸福度では90位。これでもし経済がさらにダメになったらどうなってしまうんだろうと心配になる。それこそモヒカンの怖い人たちが「ヒャッハー!」とか叫びながら跋扈するリアル北斗の拳ワールドになってしまうんじゃないか。

 でも残念ながら、いろいろな人たちが言っているように日本経済がますます悪くなっていく可能性は僕は高いと思う。なぜなら21世紀という時代は日本という国がもっとも苦手とする時代だと思うからだ。

 20世紀型の経済というのは基本的には産業革命の延長上にあり、その最終形態のひとつとしてフォーディズム、つまり「大量生産方式」ってやつがあるんだと思うのだけど、とにかくそういう発展のモデルを西洋の先進国が提示してくれる限り、日本は何も考えずその流れにキャッチアップしていくだけでよかった。

 そしてキャッチアップ、つまり追い上げるってことに関して、思うに我々日本人は最強の民族だ。
 ひとつの大きな目標に向かって、集団で一気につっぱしる。明治維新ってものはまさにそういうことだし、高度成長時代というのも同様。

 しかしある時点で、そうやって血反吐を吐きつつ必死に追いかけてふと前を見たら、誰もいなくなっていた。つまりいつの間にか一番先頭にきてしまっていた。それが80年代のこと。

 追いかける対象を失ってしまったとき、日本人は急にどうしていいかわからなくなる。個々の文化とかそういう細かい面ではいろいろと独創的なものを生み出してきた我々も、世界に影響を与えるような自前のイデオロギーやビジネスモデルなど、「大きな物語」を提示することができない。

 そして21世紀というのは、誰も模範を示してくれるわけでもなく、追いかけるべき大きなモデルがあるわけでもなく、その都度その都度で自ら思考し判断し決断しなければならない時代だ。

 どう考えてもこういうの日本苦手だと思うんですがどうでしょうか。